私の母は、髪が生えてくると、「ほれぼれするようなうぶ毛だ」と言います。髪の毛が「生きもの」だと実感させられたのは、私が小学生の時です。母の髪がなぜかどんどん抜けてゆき、地肌がすっかり見えるほどになりました。まだ四十代だったのに、髪が抜けると頭が小さく見え、おばあさんのように貧相に見えました。母はかつら売り場へ飛んで行きました。なにしろ、母は現役の小学校教師だったのです。母が選んだのは、茶色がかっていてモタモタとふくれたクリームパンのようなかつらでした。翌日からさっそくそれをかぶって学校へ出かけて行きました。目になじまないのか、たいへんな異物をのっけたように見えました。帰宅した母に、「子供達に何か言われなかった?」と問うと、「『先生それかつら?』って聞くから、『違うわよ、先生も髪の毛いっぱい生えたのよ』と言ったら納得したみたいよ」。
【関連】
最新の増毛剤
ウィッグの懸念材料
知られざるかつらの役割